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【山岳遭難研究】行方不明の具体事例8分類

  • 執筆者の写真: 山岳遭難捜索ネットワーク
    山岳遭難捜索ネットワーク
  • 2021年4月26日
  • 読了時間: 5分

更新日:2021年5月11日

これまでに関わった山岳における行方不明者の捜索・発見事例から、遭難パターンを研究し8つに分類しました。ご自身の遭難予防にご活用ください。

行方不明の具体事例8分類

 

1.「○○名山」などの単独日帰り登山


「○○名山」などの単独日帰り登山

日本100名山や200名山など、全国各地に散在する名山を目指すパターンで、他県からその山を訪れており、その山域に対する概念の把握に乏しいために行方不明がよく起こります。

そのほとんどが単独行動で、日帰りの登山が多いため、一度間違った尾根を下ってしまうと、登り返すことの困難さを敬遠して、そのまま尾根を進んでしまうことが多いです。

樹林が少ない稜線部分で起きることは少なく、下山時の薄暗い樹林帯で誤った尾根を下ってしまうことが多いです。

したがって日照時間の短い晩秋、春先などに起こりやすいです。

日本100名山などでは他の登山者が多いため起こりにくいですが、200名山などでは絶対的登山者数が少ないためにより起こりやすく、さらに目撃情報が少ないことも特徴です。

 

2.バックカントリー初心者によるスキー場コースアウト


バックカントリー初心者によるスキー場コースアウト
バックカントリー初心者によるスキー場コースアウト

近年流行しているバックカントリースキーで起きる事案です。

スキー場ではなく、スキー場コース外へ出て新雪を楽しむスキーヤーやスノーボーダーが増えています。

ゲレンデからコース外へ出るのに必要となる知識は飛躍的に増えますが、経験が追い付いていないために起きる事案が多いです。

バックカントリーのツアーはスキー場のトップから始まることが多いですが、コース外は山岳そのものですので、地形や雪質に対する鋭敏な視点が必要になります。

天候の悪いときや視界が良くないときは行動を控えるためむしろ初心者による事故は起こりにくく、天気のよいときにバックカントリーへ深く侵入しすぎることで事故は起こりやすいです。

またスキー場の立地によっては、一度コースアウトすると山の反対側の地域に出てしまい、二度とゲレンデや駐車場の方面には出られないことがよくあります。

スキーやスノーボードは移動距離が長いため捜索範囲が広がるのも特徴です。

特にスノーボードはスキーに比べて登り返しや水平移動は不得意なため、下ることを選択してしまうことが多いです。

若い世代に多いです。

 

3.地形的な誤解に端を発する事案


地形的な誤解に端を発する事案
地形的な誤解に端を発する事案

山の地形は「尾根」と「沢」と「それ以外」で構成されています。多くの場合、登山道は「尾根」か「沢」にありますが、そうでない場合もしばしばあります。

「尾根」には多数の枝分かれがあり、また「岩場」や「藪」「倒木」が出てきて登山道が認識しにくくなっていることもよくあります。

「登山道はこの尾根にあるはずだ」「こんなに岩場があるところは登山道ではないはずだ」などの思い込みと、「登山道にはピンクテープがあるはずだ」「ここは登りでは通らなかったはずだ」などの誤解が、道迷いの端緒になります。

全ての登山の教科書には「迷ったらわかっている場所まで引き返すこと」と書いてありますが、実際には「夕暮れが近い」「雨が降っている」「体力的に消耗している」などの理由により、引き返せないことが多いです。

誤った尾根を下ると、登山口よりもはるかに上流の沢に出てしまいます。

日本の渓谷は多雨により急峻になっている地形が多いため、やがて「滝」などで行き詰まり、その滝を避けて急斜面を下っている間に転落してしまうことが多いです。


 

4.山菜採りの場合


山菜採りの場合
山菜採りの場合

地域により目的の山菜が異なりますが、山菜採りに夢中になり本来戻るべき道路への方向感覚を失ってしまうことにより起こります。

特にネマガリタケ、コシアブラ、ギョウジャニンニクなど、雪国で藪を掻き分けて獲るタイプの山菜採りに起こりやすいです。

お年寄りが好みますので、転倒などの事故も起きやすく、携帯電話なども持っていないことが多いです。

 

5.バリエーションルートでの事案


バリエーションルートでの事案
バリエーションルートでの事案

登山道ではなく岩稜などの、より難しいルートで山頂を目指す登山に起こるパターンです。

普通は仲間とパーティーを組んで行くことが多いですが、困難さがそれほど高くない場合は単独で挑む登山者もいます。

始めから登山道を目指していないため、アプローチとなる沢やガレ場などで迷い、迷っている間に危険箇所で転落してしまうパターンです。

またルートそのものを単独で登攀中に転落してしまうこともあります。

県警ヘリによる上空からの捜索で見切れない場所にいる場合、長期間の捜索を余儀なくされることがあります。

例:槍ヶ岳北鎌尾根などのバリエーションルート

 

6.雪による埋没の場合

雪による埋没の場合
雪による埋没の場合

積雪期に滑落や雪崩などで遭難し、その後の降雪で埋没してしまう事案があります。

捜索は雪が溶ける春以降に再開されますが、豪雪地帯では秋以降にずれ込むこともあります。

遭難した場所がわかっていても、その後の融雪や降雨で移動してしまうことが多く、流失した遺留品を下流から探すなど、慎重な捜索をする必要があります。


 

7.トレイルランニングの場合


トレイルランニングの場合
トレイルランニングの場合

トレイルランニングは近年人口が増加しているアクティビティです。

多くの場合、スマートフォンの地図アプリを利用しているランナーが多いため、一般的には行方不明は起こりにくいと言えます。

しかしスピードを出すために一般的には考えにくい場所で転落し、登山道の外の死角にまで落ちてしまうことが稀にあります。


 

8.外国人の場合

外国人の場合
外国人の場合

日本の山岳事情に通じていない外国人が、道に迷ってしまうパターンです。

注意喚起や道標が読めないことも原因になると考えられます。

またアメリカやヨーロッパの山々と比べて日本の登山道は蛇行や迷い尾根が多く、また森林限界が高く低灌木が発達しているため、樹林帯で道迷いを起こしやすいと言えます。



9.追記SNSに関すること


このほか、ここ数年で増えているのは、登山のSNSで評価を得ている方が、評価のために無理をしてしまい遭難するパターンです。自分の登山ではなく、他人に見せるための登山を意識してしまった結果でしょうか。周りを気にするあまり、山と向き合うことを忘れてはいけないと思います。山は誰に対しても平等です。常に謙虚に山に向き合っていきたいものです。


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