テント設営完了までに1時間を要している登山者の方が気になり、インタビューさせて頂きました。『聞かなければ分からない』ある一人の登山者の状況を知ることができました。
2019年7月末日 天気:曇り
名前:柳澤優さん(60歳前後)
居住地:長野県御代田町
登山スタイル:テント縦走
山岳保険等:jRO加入
登山届け:紙に書いて提出
紙の地図使用、GPSは使わない。
インターネット情報なし、スマートフォンなし。
テントを広げては、立ち止まり、ポールを入れては、テントを眺めという状況で、なかなかテントが立ちません。一体どうしたのでしょう?テントを張り終えるとすぐに、テントの中に入って行って横になってしまいまいした。
Q.こんにちは。だいぶ疲れている様子ですが??テントを張るのに、1時間近くかかっていましたね?
足つっちゃってね~(笑)。
今年初めてだから。
こんなにキツイと思わなかった。
脚のサポーターは持ってきたから、大丈夫だけどね。
Q.今回の山の計画は?
今日栂池から来たよ。
明日は白馬山頂に行って、
頂上山荘に泊まって、
その次の日に雪渓をおりて猿倉まで行こうかなと思っているよ。
本当はね~白馬鑓に行こうと思ったの。前に白馬鑓は行ったことあるから。
そしたら、まだ小屋が開いてないってさ、、さっき案内所で聞いてね。
それでこっちに変えたの。 でもこんなにキツイと思わなかったよ~
(※今年は悪天続きとヘリ不良等の影響で、どの山小屋も荷揚げが進まず、白馬槍温泉小屋のオープンも例年より遅れていました。)
Q. 事前にネットなどで調べませんでしたか?
インターネットは持ってないの。
だからいつも案内所で聞くよ。ネットがないからね〜厳しいね。
Q.今回の登山で心配なことはありました?
心配なことは天気だけ。
無理しない。天気見て降りるよ。
今までも、出発のときに天気悪ければすぐやめたよ。
Q.登山歴を聞いてもいいですか?
登山は10年くらいかな。
始めたのはね、職場の仲間で救助隊の人がいてね、話し聞いてたからなんか興味わいて、山に行ってみようと思って。
Q.山のことは誰かに教わりましたか?
山岳会は入ってないよ。講習会も行ったことない。テントはバンバンで買った時に、張り方を教えてもらったよ。
Q. もともとは釣りから山に入ったってことですね?(※アウトドアステーションバンバンは、釣具・アウトドア用品の長野県内で展開する店。)
そう。川釣りはよくしてたよ〜。海釣りもね。
Q.どのくらい山に行かれますか?いつもお一人ですか?
テント背負っては年に2~3回、今年は今日が初めて。次は奥穂高に行ったことがないから行こうかなと思ってるよ。いつもひとりだよ。
Q.これまでに危ない目に遭ったことはありますか?
特に転んだこともないし。あんまりないかな。
Q.遭難しない自信はありますか?
うーん、大丈夫かな。道迷いはしたことないよ。ロープワーク出来るわけではないので、危ないところは行かないからね。
Q.これまで遭難しそうだった、危なかったことはありますか?
切り立った場所、怖いな~と思ったことはあった。五竜、白馬、鑓、北穂は行ったけど、遭難しそうなところは行かない。
Q.これまでに危ないと思った登山者はいましたか?
80歳くらいのおじいちゃんが、軽い感じで、北穂~奥穂に行くと言っていたのは、心配だったね。若い人は体力あるからね、ちゃんと帰れるだろうと思うけど、でも登山のマナーを伝えたことはあるよ。
Q.必ず山に持ってくるものはありますか?
カメラだね。あとは着るもの、ダウンかな。GPSは使っていないよ。
Q. 登山者に伝えたいことはありますか?
そこまで言える立場でないよ。笑。
今回は、『聞かなければ分からない』ある一人の登山者の状況を知ることができました。
Why?テント設営に時間がかかった?➡️足をつったから。
Why?足をつった?➡️急遽予定を変更したら急登だったから。
Why?急遽予定を変更した?➡️予定していた小屋が空いていないと知ったから。
Why?小屋が空いていないことを知った?➡️登山案内所で確認したから。
Why?登山案内所で確認した?➡️インターネットを使わず情報がなかったから。
足がつって歩行不可となっていら、どうなっていたのか?登山案内所で聞かなければ、どうなっていたのか?情報を得られず営業していない小屋に行っていたらどうなっていたのか?遭難のリスクもあったのでは?
しかし、柳澤さんは、単独での登山の経験は10年以上、道のない沢釣行での経験もあり、単独行でこそのリスク管理をしての行動・準備をされている。同じ状況でも、柳澤さん以外であったら、遭難していた可能性もある。インターネットを利用しないからこそ、案内所で登山道状況を確認する行動は当たり前のこと。GPSやスマートフォンを使わないが、地図とコンパスを使って山に入る。そして、計画を変更する柔軟性があり、こむら返りになりながらも、計画変更した小屋に無事に到着することが出来た。
山登りでは、予想していなかった事態に遭遇することが多々ある。その都度、判断してどう行動するかは、登山者の経験と技量による。そして、登山中に出会った人からの情報や話した内容によって、遭難リスクを回避することも出来る。
登山中に、「あの登山者は変な行動をしている。」「あの登山者は心配だ。」などと、少しでも気になる登山者がいれば、声を掛けてあげて下さい。「実は少し具合が悪くなって・・・」「実は・・・」と話をしてくれる人もいます。それが、遭難を未然に防ぐことになることもあり、遭難した場合でも、そのちょっとした会話が早期発見へと繋がる可能性が高いのです。「そういえば、気になる登山者がいた。でも話さなかった。」ということでは、なんの手がかりも得られません。山だからこそ出来る初対面同士での気軽なコミュニケーション環境を利用し、程よい繋がりの中で安心登山と遭難予防に繋げていくことが出来ると思っています。
柳澤さん、これからも安全登山を。
ご協力ありがとうございました。
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